最近注目されている超重要な腸のお話(後編)
- 健康・予防
- 2021/11/04
- 2021/11/11
前編では、腸の構造と働きについてのお話でした。
後編では、よく知られている吸収や排泄の他に、免疫にも関連となかなか多忙な腸の中身をもう少し掘り下げていきます。
第二の脳ってよばれる理由
腸は「第二の脳」って聞いたことありませんか?
様々な研究で、腸が消化器官としての役割だけでなく脳との相関関係があるなど腸の様々な機能が発見されてきました。
腸には、大脳にも匹敵するほどの神経細胞が存在し「腸管神経系」と呼ばれる独自の神経ネットワークが発達しています。
これにより、脳の司令がなくても自活でき、外部からの情報を処理、伝達できると言われています。
脳腸相関
腸は脳と互いに影響を及ぼし会う関係だと考えられており「脳腸相関」と呼ばれています。
不安や焦りなど精神的なストレスでお腹が痛くなったり、環境変化で下痢や便秘になったという経験がある方も多いのではないでしょうか。このように、脳の状態が腸に影響を及ぼすというのは体験的に理解されている方も多くいると思います。
しかし、相関というようにこの関係性は一方通行ではなく双方向であるということが最近の研究でわかってきたのです。
しかも、脳から腸よりもむしろ腸から脳に送られている情報のほうが多いと考えられています。
幸せホルモン
セロトニンという言葉を聞いたことがないですか?
セロトニンは、脳内でリラックスや安心感、幸福感などもたらすため「幸せホルモン」と呼ばれています。
このセロトニン95%が腸で作られているんです。
と言っても、腸でたくさん作られたセロトニンが、脳にそのまま運ばれるかと言うと残念ながら脳の関所を通ることができないため、そのままでは利用できません。腸で吸収されたセロトニンの元になるトリプトファンが関所を通って、脳に入ってからセロトニンが作られます。
しかし、先程の脳腸相関の通り腸の環境が脳に影響を与えるため、腸内のセロトニンの量が脳に何らかの影響を与えていると考えられています。
また、腸内細菌がセロトニンの合成にも何らかの影響を与えているという研究が進んでいるんですよ。
腸内細菌叢(腸内フローラ)
腸のお話の最後は、腸内フローラについてです。
最近は、かなり注目されているので腸内に興味を持たれている方も多いのではないでしょうか。
腸内細菌
ヨーグルトでよく知られるビフィズス菌、病気などで聞いたことがあるブドウ球菌など、腸内には約100兆個の細菌がいると言われています。
最近は、種類ごとに集団を形成して住み着いているためそれが花畑のように見えることから「腸内フローラ」というちょっとキレイな名前がついています。
腸内細菌は、小腸から大腸まで生息しており、自分たちが住みやすい場所に分布しています。
細菌は、大きく分けると3種類に分類されています。
- 善 玉 菌:ヒトに有益な働きをする菌
- 悪 玉 菌:ヒトに有害な働きをする菌
- 日和見菌:日和見菌:悪玉菌にも善玉菌にもなりうる菌
善玉と悪玉の他に日和見菌と呼ばれる環境に左右される菌が、全体の7割と実は一番多く存在しています。
腸内の環境が悪くなるとこの7割の日和見菌が悪玉菌のような働きをしてしまいます。こうなると、腸内の腐敗活動が活発になり、おならや便が臭くなったり抵抗力が下がるなどの影響が出てきます。
ただ、悪玉菌という名前がついていると無くしてしまえば良いのではないかと思ってしまいますが、消化吸収を補助するなどの役割を果たしているので、全く必要ないという訳ではないのです。
痩せ菌・デブ菌
最近、腸内の環境で痩せやすいか太りやすいかがわかると言われています。
所謂、ヤセ菌やデブ菌があるというのですが、この菌が増えると痩せる!この菌がいると太る!というわけでがなく、それぞれが腸内環境におよぼした影響によって痩せやすくなったり、太りやすくなったりすると考えられています。
さらに、デブ菌は日本人の肥満度とは関係ないというアメリカの研究で明らかになっており、肥満は腸内細菌の問題ではないようです。
しかし、痩せ菌に分類される善玉菌が活発になることで、腸内の環境が良くなると腸管を守るバリアが維持されて余分な物質を体内に吸収しなくなったり、脂肪燃焼や代謝アップに関係する短鎖脂肪酸を作り出すなど、ダイエット効果は期待できそうです。
腸内環境は、善玉菌が優位になって日和見菌と一緒に環境を整えてくれるようにバランスを整えるのが大切です。
食生活の乱れや、睡眠の乱れの他にもストレスなどで交感神経が興奮状態がずっと続いていたり、長時間のスマホで脳がつかれるなどの場合にも実は腸内環境が悪化する原因になります。
規則正しい生活や、バランスの取れた食事の他にも、ウォーキングなどの適度な運動で汗をかいたり(強すぎ運動は交感神経が優位になるので腸にストレスがかかることも)、リラックスして副交感神経を優位にすることも大切ですよ。
最後に
前後編で腸についてお届けしました。
まだまだ、研究途中のものや、新しい発見で定説が変わってきているものなどありますので、なるべく新しい情報を選んで実践するようにしてみてくださいね。